【0】安否

この作品に書かれている内容も、突き詰めると“虫の知らせ”のレベルのものになってしまうと思う。
状況を考え合わせると、おそらく九州北部の基地から飛行訓練で飛んできた戦闘機を目撃したのではないだろうか(個人的には、絶対に間違いないという確たる知識を持ち合わせていないので詳細を述べることは控えるが、佐賀の白石という場所、そして午後3時という時間から、特攻機そのものが飛来してくるのは不可能と見ている)。
やはり“偶然”という確率の方が圧倒的に高いという判断である。
ただ可能性があるとすれば、体験者が“後にも先にも日本軍の戦闘機を見たのはこの時だけ”という証言があった時だろう。
これがあれば印象はかなり変わっていたと思う。
これを怪異のレベルで考えると、やはり評価出来ないというところに落ち着くことになる(最後の方に息子の生死を占う場面があるが、これは“怪談”として成立させるための付け足しに過ぎないだろう)。
しかしこの作品の場合、個人的に意見を言わせていただくと、“怪談”という範疇で捉える以上にもっと重要な役割を与えるべきだと思う。
むしろその方が体験者の強い想いに合致すると思うし、もっと多くの目に触れる機会を作らなければならない話だという意見である。
ということで、今回の評点はあらゆる意味で“怪談として評価不可”ということで付けさせていただいた。