【+1】オラは

集団で大はしゃぎしていると、結構霊が寄ってくるらしい。
寂しい思いをしている霊は、むしろそういう賑やかな場所を好んで近づいて一緒になって遊んでいることがあるという話を何度か聞いている。
体験者自身は『帰ってきたヨッパライ』というコミカルな歌にすら過敏に禍々しさを感じており(運転手という職業柄ということもあるだろうが)、ミラーに映った手首についても“死”を連想させる存在と受け取ったのだろうと思う。
この作品のポイントは、この体験者の主観部分に整合性を持たせるために、前半部にかなり言葉を費やしている点である。
怪異を終結させたのは体験者の一喝であり、それが曲に対する恐怖心から来たものであるので完全に排除することは出来ないが、個人的にはかなり過剰に書かれすぎているように感じた。
しかし逆に“あったること”だけ書き出しても小粒な怪異に対して面白い味付けがなされているとも取れるので、結果としては功罪相半ばするというところだと思う。
ただ上にも書いたように、おそらく手首の霊は歌が楽しくて調子に乗っていただけだと推測するので、なんだか可哀想という気もしないでもない。
ちょっと気の利いた怪談話という印象である。