【０】配管の上を

ある一定期間規則正しく現れる怪異ということで、なかなか貴重な体験であると思う。
だが、書かれている内容が大雑把としか言いようがなく、色々な点でつっかえてしまった。
たとえば、最初の“素足で歩いている”と認識した時に“素足の方がいいのかな”と体験者が感じているのだが、さすがにアルバイトとはいえ、違和感がありすぎる（バイト初日の体験であるのなら許容範囲か）。
そして素足以外の足も出てくるのであるが、その登場の仕方や大きさなどから別物かどうかの判断は下させるように思うのだが、それも曖昧なまま終わっている。
一定期間同じ場所で怪異を体験するというコンテンツの場合、最も興味を持ってみる部分は、やはりバリエーションの豊富さであったり、あるいは完全な同一性にあると言える。
結局この作品では、連続的目撃であるにもかかわらず、それを強調するために必要なパーツが欠けているのである。
だからある程度続いている怪異なのになぜかそのような印象がほとんどなく、あまりにもあっさりとしすぎているのである。
また体験者以外に目撃している人間がいてもおかしくないのに、それについての記述がないのも、怪異を弱くしている要因であるだろう（あればそれに越したことはないが、なければないで書いていないと“取材不足”の感が強くなる）。
いずれにせよ、全体的に読者が知りたいと思う情報が書かれていないので、怪異を生かし切れていないという印象である。