【＋３】おめかしして

超−１

日常の風景の中でふと起こる怪異を表した作品としては、非常によく出来たものであると思う。
若干文章が硬いようにも思うが、過不足なく丁寧に状況が書かれているので読みやすい。
却って文章のぎこちなさが日頃怪異に接したことのない人物が訥々と語ってくれているような印象もあり、好印象に作用している部分もあるだろう。
通常の場合、霊の方が生身の人間よりも認識のチャンネルが多いとされ、霊は気付いているが人間の方が気付いていないケースが頻繁にあるように思う。
それ故に人間が自分の存在に気付いていることが分かってちょっと吃驚しているのだろう（おそらく偶然目が合ったというよりも、体験者が呼びかけたために視線を合わせたように思う）。
またその仕草が霊の容姿とぴったりとはまっており、その部分でも得をしているだろう。
ほのぼのとした雰囲気（これは霊ですら親しみを持ってついていったと想像出来る、体験者の性格から来ているものだと推測する）が“癒し系”とはまた違った印象を与えてくれる作品であると言える。
欠点はあるものの「読んでよかった」と思わせた分だけ、少々高めに評点させていただきたい。