【+2】順番待ち

不条理性の高い“投げっぱなし怪談”である。
怪異そのものは、書き方を間違えると、本当に取るに足らないものになってしまいそうな感じなのだが、作者が非常に巧妙なリードをしており、なかなか味のある作品になっていると思う。
行列を作っている霊の描写でも、ごく普通の人間に近い容姿のものからそうとは思えないものへと、きちんと順序だって書かれている(この配列だからこそ、行儀良く列をなしている光景がイメージできるのである)。
そして秀逸と思うのが、最後の3行である。
明らかに事故死した霊を書いた上で、“循環器系の医師”と断りを入れる。
さらに霊が列を作っていることに対して“開業医ではない”と書き、霊の存在そのものに対して“見えない人”と書いている。
ここの表記も非常に順序だった否定を展開しており、このテンポが実に心地よい響きなのである。
しかもこの連続的な否定が、怪異の発生が“因果”によるものではないという断固とした内容なのである。
この部分が、この作品が不条理性の強い内容であると思わせることに成功しているところである。
小ネタである故に高い評点は出さなかったが、作者の意図が隅々にまで行き届いていると言える作品であり、完成度が非常に高い作品であると評価したい。