【−4】想い砂

最低限度の怪異はあるものの、タイトルを含めて作品全体に統一感がなく、かなり破綻した状態であると判断したので厳しい評点とさせていただいた。
おそらく推測するに、作者としては両親のなれそめの不思議な縁を書きたかったのだと思うのであるが、そこに白血病患者の少年とのエピソードである“星砂”を先に出してきたために、全体的にちぐはぐな展開になってしまったように感じる。
特に怪異の肝である、晩に枕元に現れた男の容姿が書かれていないために、それが亡くなった少年か未来の旦那かの区別が明確でないという、かなり致命的な問題が生じてしまった(作者としては、“男”だから少年ではないと言いたいかもしれないが、亡くなった少年の享年が書かれていないから、読者はどうとでも受け取れるわけである)。
結局のところ、作者にとってこの一連の話は結構昔から聞かされたものであり、些末なエピソードを省略しても無意識に話が繋がってしまい、これで完成されたエピソードになっているのかもしれない。
だが初めてその話を聞く者からすればこれは部分的な断片でしかなく、もっと詳しい情報がなければ1つのエピソードとして連結させることが不可能なのである。
しかしそのような善意の解釈が出来たとしても、出来上がった作品としては不完全としか言いようがなく、マイナス評価しかできないということになってしまうだろう。
その前に「怪談ではない」というツッコミすら出来てしまうところに、この作品の本当の弱さがあると思う次第である。