【−3】映画館にて

どうもおふざけが過ぎる内容である。
特に問題視したのが“楽屋落ち”ネタの多用である。
結局、『デビルマン』の実写版を見た人でなければ解らない内容で書かれているコンセプト自体が、読む者を限定するという“公開制”に対してのアンチテーゼのようなことをやってしまっているわけである。
仮に“見ていない者でも読むに耐えうる”内容であれば話は別だが、この作品の場合、見ないと解らないのではと思われる箇所があるため、その分だけ評価を落とさざるを得なかった。
また怪異そのものだけを抽出しても、やはり“映画館での怪異”というある種定番であり、しかも怪異の内容が声だけというものでは、同一ジャンル内でも弱さが目立ってしまうだろう。
怪異の内容が弱いためにわざわざ凝った書き方にしたのかもしれないが(またこの文体そのものが、かなり“人を選ぶもの”である)、それが却って仇になってしまったというところなのかもしれない。
詰まるところ「自分の知っているもの(好むもの)を、全ての人が知っている(好む)とは限らない」ということに尽きるだろう。