【−1】祖父にまつわる話

怪異そのものについては、興味を惹く内容のもの(従兄弟の話は怪異としてはかなりのものだと思う)であると断言できるのであるが、一つの作品としてみた場合、全然それが活かされていないと言うしかない状況となっている。
身内の死後その死んだ者が現れるという、どうしても体験者としてはウエットにならざるを得ない内容であるが、文章自体は非常に冷静に書けていると思う。
ところが構成で言うと、あまりにも多くを詰め込みすぎて(これは作者である体験者の思い入れの強さ故である)、完全に取り留めない状態に陥っている。
例えるならば、本人は努めて冷静に論議しているつもりなのだが、同じ内容を蒸し返しては議論をふっかけているような印象に映るのである。
結局、客観性を維持する努力はしているものの、全体の構造そのものが主観で組み立てられてしまっているのである。
独りよがりな内容とまでは言わないが、読者を意識した構成にはなっていないと言っていいと思う。
多くの指摘があるように、一つのエピソードに特化してまとめ上げれば、それなりの評価を得ることが出来ただろう。
(従兄弟の話だけピックアップすれば、個人的には+2点でも良いと思っている)
それぞれ独立したエピソードを一つにまとめても、相乗効果が得られるものではないということである。