【+3】苦い

最初に悪徳リフォームの手口を詳細に記すことで“実録風”を狙ってきたという印象で読み始めた。
またこのようなヤバいお仕事関係者の体験談は大ネタになる確率が高いということで、かなり期待して読んだ。
結論から言うと、「この話はまだ完結していないのではないだろうか」というところである。
言い方を変えれば、大ネタになる寸前のところで蔵出しされたという印象である。
騙しの手口に関する記述そのものは長いとは思わなかったが、読み終えた段階で「怪異の表記に比べると長い」と感じた。
その怪異であるが、実際に物証として挙げられるのが“体中に付いた小さい噛み傷”と“歯茎から出る黒い汁”あたりであり、その他の事象については状況的に推断される内容であると思う。
例えば、リフォームをした家の来歴についても間接的な証言にとどまっており(おそらくこれが具体的に明らかになればなるほど凄まじい内容になるだろう)、また失踪した人物も何が原因でそうなったのかが解らずじまいである。
ただ、そのような状況証拠の積み重なりがあって初めて圧倒的なカタストロフィーが生み出されるのは確かであり、ある意味それに足るだけの条件は整っていると感じている。
ところが、そのカタストロフィーがまだ発生していないように見えるのである。
不謹慎な言い方になるが、体験者にとってまだ最悪の結果は訪れていない状況なのである。
だから、まだリフォームの手口の方が魅力あるものに映ってしまうのだと思った。
文章についてもグイグイと引っ張れるだけの力があると思うし、構成についても何の不足感もない。
ただ取り出された怪異がまだ成熟していないという印象を受けるだけである。
傑作となりうるだけの条件はあるが、現状では佳作というところで。