【+1】禍漁り

怪異の本質の部分で外しているという意見である。
勿論、中学生の霊体が襲ってくるのは非常に恐ろしい場面であるし、読者へのインパクトについても十分見応えのあるところといって間違いないと思う。
だからその部分の記述を分厚くすることには異論はない。
しかし、タイトルにあるように、この怪異は“霊に魅入られてしまい、つきまとわれる”ところにその本質があると言うべきである。
つまり一回きりの体験談ではなく、その恐怖体験の後にも同じように呪詛の言葉を書き連ねた本を拾う、そして家に持ち帰ると同じ目に遭うことをしっかりと明記しなければならない。
特に同じ種の本を拾うことについては、拾った場所や頻度も明らかにしなければ、魅入られつきまとわれているという印象を作り出すことは出来ないだろう。
とどめとばかりに玄関先に参考書が置かれた事実に至るまでの経緯をもう少し書かないと、霊による執拗な狙われ方が読者にまで伝わらないと思う。
遭遇した怪異は1回だけでも相当強烈なものであると感じる(またその部分の描写で大きな瑕疵がないことも評価の対象である)ので大きく減点することはなかったが、実際のところは失敗の部類に入る書き方であることだけは明言しておく。