【−2】自転車

小ネタの“投げっぱなし怪談”であるが、怪異のレベルから考えると、妥当な選択であると言えるだろう。
しかしながら、情報の開示する順番が明らかに間違っている。
タイトルが“自転車”でいきなり“マンションの5階”と出てくれば、ほとんどオチまで一直線で見えてしまう。
この陳腐な怪異では、先読みされてしまえば、評価以前の問題としてどうにも致し方ないわけである。
“ふと見ると家の横を自転車が走っている→男が乗っている→スーッと走り去っていく→ここはマンションの5階”という展開にしないと、オチのインパクトはゼロに近いものになるだろう。
“投げっぱなし”だから素材をそのまま書き連ねていかなければならないこともなく、むしろ短い文章だからこそそういう細かい部分にまで全神経を集中させて構成を練らなければ、それなりに評価できるものにはならないだろう。
特にこの作品にあるような、ありきたりとも言えるような怪異ではネタだけで勝負できるようなものではないし、当然書き手の創意工夫が求められるのである。
ネタ・書き方のいずれをとっても、読者の存在を想定した“読ませるもの”の次元に達しているとは言いがたいので、残念ながらマイナス評価とさせていただいた。