【−4】黒猫ニャーゴ

飼っていたペットがその死後に飼い主の元を訪れるという話も、“動物ネタ”の中では定番中の定番である。
この作品では、その定番をベタベタなぐらいに書き綴っている。
そして最も悪いのは、怪異である現象そっちのけでとにかく体験者の思いばかりを切々と書いている点である。
これでは記録としての実話怪談の体をなしていないと言ってもいいだろうし、また思い入れが強すぎて、主観目線の独善的な書き方のパターンにはまっている。
怪異については、死んだ猫が体験者の元に訪れている(それも体験者自身が精神的に弱っているときに慰めに来てくれていると“思い込んでいる”)というごくありふれた内容であり、ほとんど見るべきものはない。
そのために体験者の感傷的なエピソードを挿入したのかもしれないが、とにかくわずか数行しか怪異が書かれていない状態で、果たしてこの作品を実話怪談と呼ぶに値するものと見なすべきだろうか。
結局のところ、この作品は体験者の心情だけがクローズアップされる内容であり、決して事象を取り扱う観点から書かれたものではないということである。
創作であればこのような書き方でも怪談と呼べる代物になっていたかもしれないが(ただし“大人向け”でないことは間違いない)、実話としては余りにも感情面が勝ちすぎて“あったること”を記すものとは言い難いという意見である。