【+2】家具調テレビ

テレビと霊体は相性がよく、テレビを介して霊がコンタクトを取ったり、画面に霊体の顔が映る写真が撮れたりすることも結構ある。
だがこの作品のように、テレビに特定の霊体が憑依し、画面から飛び出して現れるというケースは非常に珍しい。
不思議で奇怪な現象であるが、テレビならばあり得るのではないかと思ってしまうところが評価を高くしている。
そして、怪異を引き起こすテレビが家具調テレビであることも、非常に印象を良くしているところがある。
家具調テレビに対する印象は、まさに“一家団欒”であり、平凡ながらも幸せな家庭のイメージがある。
そのようなイメージを持つ機械から飛び出してくる霊が、家庭崩壊の恨み辛みを吐き出して、ほとんど見境なく危害を加えようとするのである。
具体的にどのような経緯があったかは分からないが、それでもこのテレビの所有者であった家庭に悲劇的な不幸があったことは想像に難くない。
それ故に悲しくもあり、そして怪異が起こった事実の恐怖と背中合わせに切ない気分にさせられるのである。
またこの微妙にウエットな素材が、外国人というフィルターを通してより一層鮮やかなものに仕立てられており、まさに実話怪談の妙味と言うべきものになっていると思う。
惜しむらくは、最後に怪異の謎を解き明かすように語られる老人の言葉である。
この言葉によって怪異の原因と目的はより明瞭になるのだが、果たしてそれが本当に良かったかどうか。
個人的には、家具調テレビから現れた霊体の言葉でほぼ全ての状況を察することができるため、ここまではっきりと種明かしをする必要はなかった、むしろ予定調和的に老人が登場することで逆に胡散臭さを覚えてしまった。
怪談というものは、別に怪異の因果関係を究明するために書かれるものではないから、ある程度事情が分かる範囲であればほんのりと色付けされた解明だけで十分だという意見である。
やむにやまれぬ怨みだからこそ、全てを語り尽くす必要はないと思う。