【−3】編み目ごしに

些細な怪異をこれでもかと引き延ばした結果、完全に展開のバランスを失った状態になってしまっている。
怪異は、要するに、ネット越しに見たらあやかしが見えるというものであり、鏡とかレンズ越しだけ見えるあやかしと同じパターンの話である。
それ故にそれだけの目撃で希少性を強調しようとしても限界があると思うし、目隠しネットだから珍しいと言われても、実は網目状の品物で同じような怪異が発生している類話はかなりある(例えば蚊帳とか薄い布越しとか)。
結局のところ、怪異そのもののレベルはさほど評価できるものではないのである。
それをことさらに大仰にしつこく繰り返し、それ以上の怪異も出てこないという展開であれば、何をか況わんやである。
ほとんど希少性が認められない些細な怪異を延々と書かれても、並みの筆力では面白くも何ともない、はっきり言って退屈以外の何ものでもない。
もしこれが数行の“投げっぱなし怪談”で出されたならば、読むに耐えうるだけの作品になっていたと思うし、怪異の持ち味が活かされたものになっていたと想像する。
ただし、最大限に怪異が活かされたとしても、可もなく不可もなくというレベルのものであることは動かしようのない事実であり、ある意味、小粒ネタの宿命と言わざるを得ないかもしれない。
怪異にそぐわない文章のくどさ、しかもそれが冗漫な繰り返しによる無駄だらけの文章によって構成されている(というものの、一部の位置関係が理解しづらいという手際の悪さ!)ということで、かなりの減点とさせていただいた。