【０】正座している男

“です・ます調”で書かれていることと、濃密な説明調のために、何だか“怪談語り”の原稿を読んでいるような印象が残った。
おそらく声に出して読んでみたら、文章に書かれている状態よりももっと迫力のあるものに感じるのではないかとも思う。
怪異についても、単に正座しているのではなく、どう見ても拘束された不自然な状態で死んだのではないかという霊体であり、その部分だけでも気味悪さが増幅していると言えるだろう。
また最後に体験者が解釈しているように、この霊体が果たしてテレビに憑いていたものなのか、本当は最初から部屋にいたものなのかが微妙なところも、強烈ではないものの、得体の知れない存在としての恐怖感を煽るものになっている。
（個人的見解では、テレビを取り付けたために寄ってきた霊体、つまり物や場所に取り憑いている霊ではなく、条件が重なったために現れた霊体であると思う。）
ただ問題なのは、説明調の文章で押し込んできているにもかかわらず、その説明が解りづらいというところである。
特に体験者とテレビと霊体との位置関係がすんなりと入ってこず、一度図に描いて確認したぐらいである。
この作品の場合、この位置関係が怪異の肝の一つであり、ここでつまずいてしまったということはかなり問題であると言わざるを得ないだろう。
現れた霊体の希少性と、文章のまずさで相殺ということで、最終的には可もなく不可もないという評価とさせていただいた。