【+1】ピンクゴールドでハート型の

二度の怪異が書かれているが、後半の方が明確な怪異であるとみなせるように順を追ってしっかりと書かれてあるために、不可解な現象であるものの説得力を持っていると感じる。
“佐藤”のシールのついた箱を取りだして見たら中身がない、店のスタッフを呼ぶ、呼ばれた店員が佐藤さんとう男性、でも取り置きを頼んだのは女性、ところが女性の“佐藤”さんは店にいない…この一連の流れは、かなり計算された展開であり、読み手を意識した流れになっていることは間違いない。
それ故に、非常にチャラチャラしたキャラクターが前面に出ていて軽く感じることがあっても、決して勢いだけで誤魔化しているようなレベルの作品ではないと判断した。
ただし、連続した2つの怪異を読むに至って、まだこの怪異は続くのではないかという気分にさせられた。
つまり現段階ではこれだけで収まっているのだが、彼女とつきあっている間はまだこれとよく似た怪異が起こるのではないか、いわゆる“現在進行形”の怪異ではないかという疑問が湧いてきた。
呪いや祟りといった強烈な怪異であれば、“現在進行形”の怪談は終わりのない絶望と恐怖を与えるが故に、その存在感を増す凄味を見せつけるのであるが、こういう首を傾げるような奇妙で不思議な話の場合は、変に中途半端な印象の方が強くなってしまうように感じる。
おそらくこれ以上起こらないのではないかという結末を迎えてこそ、初めて一つのまとまりを持った怪異として認められるという印象なのである。
その面で言えば、この怪異はもう少し経過を見て全てが収束した段階で公開された方がもっと面白い展開になったのではないかという、少々欲張りな期待の方を強く感じてしまったと言える。
ちなみに体験者のキャラクターを前面に押した構成については特に可もなく不可もなしというところで、怪異の内容に対して合っているとも合っていないとも言えないという感想である。
ある意味読ませる部分の大きい怪談ということで、プラス評価とさせていただいた。