【−４】霊園で肝試し

一応怪異は発生しているのだが、肝がそこになく、結局友人の仕打ちとヤンキーとの恐怖の方が目を惹くことになってしまった。
怪異が起こっているから怪談の範疇には入るが、完全に内容は外してしまっているとしか言いようがない。
最後の一文などは蛇足というよりも、それまでの内容の全てをぶち壊して、一体書き手の言わんとする目的が何だったのかすら理解できなくなってしまうほどの間の悪さである。
さらに言えば、怪異の書き方が伝聞体でほとんど語られていて、非常に薄ぼんやりしたものになってしまっており、怪異の持っている恐怖感や緊迫感といった感情が間違いなく殺されてしまっている。
怪異そのものの小粒さよりも、むしろこの書き方そのものがこの作品を駄目にしてしまっていると言っても良いと思う。
よくあるネタではあるが、状況を積み上げていけば怪異が起こっている事実をはっきりと明らかに出来るレベルの証言があるだけに、体験者とヤンキー連中との目線で怪異を展開させていけば、そこそこ読めるだけの作品に仕上がったのではないだろうか。
怪異を伝聞体で書くだけで、読み手に伝わってくる感覚は一気に薄くなり、極端に言えば、まるで絵空事のような印象すら与えてしまう危険性がある。
おそらく書き手としては、よくあるネタだから笑いの部分を強調したかったのではないかと推測するのだが、それも怪異の部分が伝聞体で迫力がないために中途半端に終わってしまっている。
笑いの取れる怪談とは、しっかりとした怪異が書かれてあって初めて成立するものであり、ただの笑いだけで勝負しても結局怪談の部分で引っ掛かってしまうことになるものである。
小ネタであってもしっかりと怪異を表現することが、怪談の書き手として最低限度の仕事であると思う次第である。