【+2】もじゃっ

いわゆる色情霊・性霊と呼ばれる霊体の仕業のようにも見えるが、それらの霊特有の攻撃性や執拗さがあまり感じられないため(色情霊は男女問わず、欲望のまま“精を吸い尽くす”というのが基本行動とされる)、もしかすると相手の男性の“生霊”がなせる怪異という気もしないでもない。
ややソフトな色情霊という印象のせいもあり、また書き手が“下ネタ怪談”ギリギリのところで抑制された文章でまとめているので、ほんのり品も感じさせるような印象が強くなったと思う。
また体験者のあっけらかんとしたキャラクターが最初に作られており、その部分も下ネタのきつさを和らげているように感じる。
キャラクターとしてはあまりにステレオタイプ的という批判もあるかもしれないが、やはり実話怪談の妙は怪異の部分に集約されるべきであるという見解なので、怪異に密接に関連する場合を除いては体験者の性格描写を事細かにする必要性はないと考える(怪異に遭遇した時の心情・心理描写は当然微細に書くべきだが)。
その点で言えば、ある程度体験者をデフォルメすることは許容範囲であるとは思う次第である(ただしやりすぎれば、信頼関係はガタガタになる危険性は重々承知した上での見解である)。
この作品の場合、そのあたりの肉付けが絶妙と言えると思うし、キャラクターが活きているからこそ怪異の部分も活きているという印象である。
また都合4箇所も愛撫されて気付かなかったのか、あるいは腕のあやかしを認識した瞬間のリアクションが変とかという指摘もあるが、まあこれが色情霊に犯された時の忘我の境地なのかも知れないということで、個人的には不問とさせていただいた(色情霊と好意的に交わった人の感想はおおむね「これ以上の快感はない」そうだし)。
小ネタに近いのであるが、コンパクトにまとめられており、また怪異の本質を的確に掴んでいると判断したため、若干高めの評価と言うことにさせていただいた。