【0】指切りげんまん

下手な解釈を施さずに、ひたすら“あったること”でほとんどをまとめ上げた点は評価できる。
この種の話は類話が多く、この作品の場合も途中で結末が分かってしまったが、その類話の多くは現れた霊体を善悪どちらかのカテゴリーにはめ込むことでストーリーを展開させようとする書き手の意図が見え透いてしまうために、非常に説教くさい内容になってしまう。
ところがこの作品では、最後まで“おばあちゃん”の霊の目的が掴めない。
つまり、人を死に引きずり込む“死神”なのか、あるいは死ぬ運命にある子供に最後の夢を与える“天使”なのかが明らかになることはない。
恐怖というレベルにまで引き上げられた内容ではないが、ただ良い意味でのモヤモヤした割り切れなさが、怪異の不思議さを引き立たせているという印象で読むことが出来た。
ところが、一番最後の部分で書き手が大きなミスを犯してしまった。
指切りした相手がどちらなのかという問いかけをすることで、強制的に白黒をつけさせようと働きかけてしまったのである。
これでは今まで“あったること”だけで固めて、断定的な解釈をおこなってこなかったことの利点を台無しにしてしまったと断言してもいいだろう。
多くの指摘があるように、子供の退院時のエピソードだけで終わらせた方がはるかに強烈な余韻が残ったことは間違いないだろうし、そこで止めてしまうことで、読み手各人がそれぞれ異なる解釈を求めてさらに深くこの怪異に思いを馳せるきっかけを作って、奥行きの深い作品となったのではないだろうか。
結局最後の一言で恐怖を煽ることは出来たかもしれないが、ただその煽りは陳腐であり、さらに言えばそれまでの微妙な印象を崩すデメリットばかりが目立ってしまったのである。
トータルでは良い点と悪い点が相殺されて、可もなく不可もなくというところで落ち着かせていただいた。