【０】誰かおるでぇ

超−１

小ネタとしてはかなりインパクトのある怪異であると言えるだろう。
だが、最初の状況説明が非常に分かりにくい上に、結局怪異に直接的に関係していないわけであり、コンパクトにまとまっているように見えていながら実はバランスの悪い構成になっている。
他人が入り込んでくるような場所ではないことを強調したいのだが、入り込んできている相手が目と歯だけしか見えないのだから、この状態だけで十分あやかしであることが解るはずであり、敢えてこの場所的シチュエーションを書いた書き手の意図がよく解らないのである。
またあやかしであることの“気付き”の場面も“目と歯が浮いているのを発見してから声が聞こえた”という順序で書かれているが、これも怪異としてどちらが重点的である方がインパクトが強いかという点を考慮すると、逆ではないかと思うわけである（書き方を見る限りでは、あやかしの目撃と声とのタイムラグはほとんどなく、順序を逆にしても別段捏造というほどのことではないだろう）。
さらに言えば、怪異の中心であるあやかしの容姿の描写がかなり平板的であり、何となくあっさりと流してしまったような印象が残った。
やはり目撃したあやかしの突拍子のなさを活かすことが、怪異の本質を的確に捉えているという見解であるので、その部分に収斂されていくような展開こそが必要だったのではなかっただろうか。
一見短く刈り込まれているようではあるが、まだまだ改良の余地はあると思う。
ただ必要最小限度の情報はしっかりと書かれているので、可もなく不可もなくという判断をさせていただいた。