『目玉焼き』

“小さいおっさん”目撃談である。ネタのレベルから言えば、この作品のようにサラリと“投げっぱなし怪談”としてまとめてしまうのが無難であると言えよう。しかし、それ以上の期待も出来ないし、ある意味怪談としての評価レベルはたかが知れており、意表を衝くような内容でも平均値並み、ほとんどプラス要素はないところである。言ってしまえば、この手の話はいくら投稿してもプラス評価に持ち込むことはほとんど見込めない、下手をすればマイナス評価に落とされる危険の方が大きいだろう。“小さいおっさん”ネタそのものが飽和状態であり、よほどのネタでない限り評価はないものと考えておいた方がいいと思う。当然【超−1】大会でも、そのような扱いが妥当だと思うところである。
卵から出てきたというケースは希少であると思うが、いかんせん、おっさんの容姿に関する記述がないのは痛い。この怪異の一番の面白さは、おっさんの容姿と言動であり、その片方がないのは、この怪異の本質にとってはマイナス要素であるだろう。
そしてフライパンの中で熱さにのたうち回った後でどこかへ行ってしまうのであるが、目の前で起こっている怪異にもかかわらず“どこかへ行ってしまった”という表現は、かなり好い加減な印象になってしまう。不意に消えてしまったのであればそのように書けばいいし、目を離した隙に消えたならそれなりに書けばいいだろう。非常に中途半端な表記で、怪異がなおざりにされているかのように見える。
最後の一文は気が利いているが、やはり怪異そのものの記述で不備があるという判断であるので、どうしても評価はマイナスとせざるを得ないだろう。短い内容だけに、ちょっとした不備でも大きく減点されてしまうことになる次第である。
【−3】