『おじいちゃん……』

結論から言えば“思わせぶり”ばかりが先行してしまっており、怪異の内容そのものを非常に矮小化させている。またその“思わせぶり”が意図的であるとしか見えず、イライラを起こしそうになるレベルである。
まず、書き手本人が“記憶がない”という点であるが、単に知らないでは済まされない書きぶりである。冒頭からそのトピックに集中し、特に弟がその記憶の件で何かを知っているような素振りを見せている。だからこそ、読み手とすれば、怪異とその記憶喪失を結びつけようとしたくなるわけである。しかしながら、ここで書き手はあっさりと話の腰を折って、自ら語らなくなる。結局、読み手に煽るだけ煽っておきながら「それは今回はいい」などという、人を小馬鹿にしたようなはぐらかし方で逃げるのである。これでは何のために今まで語ってきたのか分からない。もし書き手自身が、怪異と関係あると思うのであればしっかりと弟なりに取材して書くべきであるし、関係ないと思えば全く触れずにいればいい。どっちともつかない、しかもそれを自己満足的な形で終わらせるのは、怪談以前の文章構成の問題である。
この自己満足的な話の打ち切りについては、さらに祖父の死に関しての部分でも書かれているが、この傍若無人な書き方は“一話完結”がルールである【超−1】の大会においては、マイナス評価以外の何ものでもない。もしかすると話の核心部分へ行くための“閑話休題”的な扱いで書いているのかもしれないが、どうみても読み手を見下したような印象しか残らず、しかも“このエピソード以外にももっとすごい話があるが今はこれだけ”という勿体つけた態度にも繋がってくる。とにかく一話完結のストーリーの中で“他にも”と述べることは、そこに書かれた内容以外に読み手の興味を惹きつけ、結局書かれた内容を蔑ろにするだけの効果しか生まない(プロの大家が表明するとか、大人気の連載作品での告知であれば、スピンオフの期待もあるが…)。少なくとも、この大会で投稿する作品では「語ってはいけない」NGワードを記してしまったと言えるだろう。
結局怪異そのものについては、亡くなった祖父の言葉を聞いて弟を事故から救ったという内容だけで終わってしまい、第三者(弟)の証言があるので信憑性はあると思うが、ごく平凡な顛末であると言うしかない。マイナスばかりが目についてしまったので、最低評価は避けるが、限りなくつまらない作品になってしまったと言うしかない。
【−5】