『会社からみえたもの』

一人称独白体の悪い部分がかなりきつく出ている作品と言える。はっきり言ってしまえば“自意識過剰”の文章である。つまり“あったること”を書くのではなく、“見える”人としての自覚の下に、己の体験した実例を挙げて、思うところをつらつらと書いた自己主張型エッセイのような内容なのである。しかも、冒頭部分で自ら問いかけをしておきながら、最後の部分で既に色々なことを試していて自己解決済みのようなことを堂々と書いてしまっている。正直、エッセイとしても自己満足的なニオイに溢れていて、非常に鼻につく内容と言わざるを得ない。特に自分自身が他人とは違うものが“見える”ことを暗にひけらかしているように見える点(結論部分が“自分と一緒にいると、他の人も見えるようになる”などと書いているから、自慢にしか映らないわけだ)、目撃した他の人が「ワカリマセン」と答えるだろうと予測している点あたりは、自分の持っている能力に酔っていると指弾されてもおかしくないと言えるかもしれない。“見える”という能力を卑下したり、悪だと思い込むことは絶対にしてはいけないが、無意識に自意識過剰に走ってしまうと、理解を得ることは非常に難しいと思う。
怪異についてであるが、UFOの目撃ということであり、それ自体はさほど大した内容ではないと感じるが、見た場所が場所だけに面白い話だと思う。また“見える”能力が同伴者に伝染する話も、このようなしっかりとした実証も多くないので、それなりに興味を覚えた(逆に言えば、もう少し人数の多いケースを出してもらいたかった)。それ故に、書き方を変えて“あったること”中心に事実のみを記述すれば、そこそこの話になっていただろうと推測する。
ブログの記事であれば、こういう書き方は有りだと思う。だが、この書きぶりの作品を“実話怪談”と認めることは出来ないという意見である。よってかなり厳しめの評点とさせていただく。
【−4】