『スポットライト』

夢うつつの状態の怪異というのはやはり判断の分かれるところであり、“あったること”そのままだけがきちんと書かれていれば可とする人もあれば、客観的物証が備わっていないと夢のレベルであると厳しく指摘する人もある。この作品もこの判断一つで大きく評価が変わるところがある。
姉弟が見た“光”であるが、二人ともがほぼ同じような特徴を持った光であると認識していると分かり、その点で言えば、夢である可能性はかなり低いだろう。しかし子供の体験であるために、偶然戸外から漏れてきた光を見たという可能性は否定出来ない。特に家の構造もはっきりしておらず、その偶然は否定する記述もないだけに、この疑念はかなり残る。この“光”が戸外から洩れてくるものとは完全に異なる状況を説明するか(現状の表記では、光源がどこにあるのか、明るさはどの程度のものなのかなど、まだまだ説明が足りないと思うところがある)、あるいは戸外から光が入ってくる可能性そのものを否定しておく必要があっただろう。
そして一番気になるのが、弟の手のひらが黄色くなった現象である。この部分が一文のみの説明に終わってしまっていることは、怪異を明らかにする点において非常に不備を感じる。これがアザなり傷であれば、この程度の説明で終わっても極端な不足感は生じないだろう。しかし手が黄色くなる現象は、それ自体が怪異であると言っても間違いない。特に1週間にわたって消えないというのであれば、親も気付くだろうし、何らかの処置があって然るべきである。少なくともどのような症状であったかをもっと書かなければならない現象であり、しかもそれによって“光”の原因も多少なりとも判るかもしれないほど重要な物証である。この部分をあっさりと書いたのは、怪異の信憑性を書き手自身が弱めていると言わざるを得ない。
不思議な現象であるとは思うが、その現象をとことん突き詰めて描写説明出来ていないという印象を持った。それ故に、夢や錯覚の可能性を完全に振り払うことが出来なかったとも言える。若干のマイナス評価にさせていただきたい。
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