2011-04-23から1日間の記事一覧

『名残』

全体の印象でいうと、“女郎屋”のイメージが強すぎて、却って怪異そのもののカラーが塗りかえられてしまっていると感じている。要するに、“女郎屋”の持つ“哀しい女の生涯”というイメージが強烈につきまとい、それが怪異の雰囲気を悪い意味で鮮明にしてしまっ…

『訪問者』

とにかく全ての内容が良い意味で要領を得ない話であり、実際にどこからどこまでが怪異であるのかすらもうひとつ分からないと思ってしまうような作品である。特に秀逸なのは、体験者自身が自分の今体験している内容がどんどん理解不能になっていくのを自覚し…

『つきまとい』

この作品は“物証”の勝利と言っても間違いない。この紙幣ナンバーが動かぬ証拠と言わざるを得ないわけであり、それ以前の怪異がたとえ偶然や思い込みであったとしても、この京都から東京という遠距離を数日のうちに移動して元の持ち主に戻ってくる確率を考え…

『病床の看護師』

結論から言ってしまうと、ある一定の方向へ怪異を誘導しようとする意図が完全に見えてしまっていて、御都合主義がまかり通っている作品ということになる。もっと具体的に言えば、全ての面において明確な理由付けがなく、予定調和的に怪異を認定し、そして自…

『暗影』

まさしく“伝播怪談”の王道を行く作品である。人の死を予知し、その予知した人が今度は自らが死ぬという連鎖は最悪のパターンであり、そしてこの流れを知ってしまった人間が現在最終の体験者であり、何とも言えない重苦しい状況で話が締め括られている。しか…