2009-01-01から1年間の記事一覧

【−3】お化け屋敷にて

これは事実だから致し方ないのであるが、怪異の肝とばかり思っていた家屋の揺れが実は“地震”だったというくだりで完全に腰砕け状態となってしまった。 結局それを上回るだけの怪異が出てこないために、一体何のための怪異報告であるか、書き手の公開意図が知…

【0】逢魔が刻

情景部分の描写などはそれなりに妖しい雰囲気を作り出すことに成功していると言えるのだが、肝心のあやかしの容姿についての記述が非常にぞんざいなものになっている。 座っている様子は何か凝った表記をしているが(ただしイメージ出来る姿は、ヤンキーの兄…

【−1】父の気配

冒頭から起こる怪異の雰囲気とタイトルとの間に大きな意識の隔たりが生じたために、最初からエピソードの展開に付いていけなかった。 妖しい気配に対する母親の対応を見ると、どうしてもその気配の正体が邪悪で禍々しい存在であるかのような印象を持ってしま…

【+3】出席番号十一番

日常の間隙を縫って非日常である怪異が入り込んでくるとするならば、この作品における怪異はまさにその典型であると言えるだろう。 どこからが日常の世界で、どこからが非日常の異界なのかが全くわからないまま事態が展開する流れは、非常に読み応えのある作…

【0】廃墟

書き手が非常に意識していたのは、廃墟内の怪異ではなく、むしろ一緒に入った女の子の存在だったのだと推測する。 実はその女の子と遊びだした段階で既に怪異の世界に一歩踏み込んでいるのであり、彼女の存在なしには廃墟探訪もなかったし、その中で様々な怪…

[超−1]【+2】校庭

作品としては隙だらけ、冒頭部分からかなり脱力させるような間の抜けたエピソードであり、ある意味構成としては自滅していると言ってもおかしくないレベルの内容である。 この作品に関する重大な“発見”をするまでは、間違いなくマイナス評価以外はあり得ない…

【−3】停電

収拾がつかないという以上に、雑然と怪異を並べ立てただけというお粗末な怪異譚となってしまっている。 しかもそのバラバラな怪異を繋いでいるのが、体験者のピント外れな講釈や余計な補足的説明だから、さらにうんざりとした印象しか残らない。 結局、体験…

【+3】晶働

人間の邪念が生み出してしまったものの恐怖、そしてそれが一人歩きしてさらなる恐怖を生み出す。 ネタとしては抜群の内容であり、とにかくこの水晶そのものの邪悪な執拗さがこれでもかと言わんばかりに書かれており、それが生み出された経緯の凄まじさも相ま…

【−1】真夜中の光

作品全編から「信じてくれよ」という体験者の叫びみたいなものが噴き出しており、却って雰囲気を壊している。 信じてもらいたい、寝ぼけていたわけではないという主張を書いてでもわかって欲しいという気持ちは理解できるが、ここまで書いてしまうと逆に胡散…

【−1】すれ違ったのは

単純な目撃談であり、“投げっぱなし”的なインパクトが文章で作り出せなかったために、ほとんど何も印象に残るものがなかった。 言うならば、信憑性云々以前に読者を驚かせる工夫も何もないということである。 “狐のような顔をした人が歩いていました”と書く…

【+1】黒い仏像

非常に興味深い怪異現象であり、また希少な内容であると感じる。 博物館や美術館に展示されている仏像というのは信仰の対象ではなく美術鑑賞の対象という認識で見ているが、それでもなお他の美術品と比べると何か違和感というものを覚える。 そういう印象が…

【−3】生首

しっかりとした怪異が起こっているにもかかわらず、完全にポイントをはずしてしまった書き方になってしまっている。 体験者の言葉を疑っている話者の態度が、作品の枠として冒頭と末尾で大々的に書かれてしまっているために、怪異そのものの信憑性を作品内で…

【−2】マハーデーヴァの加護

インドの神々が絡むエピソードであり、ある意味スケールは大きいと感じるのだが、怪異のパターンとしては“神様にお祈りしたら病気が治った”だけの話であり、その神様がたまたまインドの神だっただけのことであるという認識である。 それ故に、凄いなと思いつ…

【0】べしゃっ

典型的なポルターガイスト現象であるが、その目的が人間が捨てた物を投げ返したりするような明らかに悪戯レベルのものであり、恐怖といえば恐怖なのであるが、何となく人を舐めていると思われる部分が比較的強いものであると考える。 書き手もそれを意識した…

【−1】午後四時の一致

事故や病気で死ぬ者がその最後に別れを伝えにくるという典型的な話であり、いくら書き方を変えてもどうしても先の展開が読めてしまっている。 この作品の場合、午後四時という時間に着目して怪異がほぼ同時刻に現れていることを強調することで、変化球を投じ…

【+3】白

典型的な“旧家の因襲が破られて怪異が起こる”パターンの作品であるが、このシチュエーションの話だけはお決まりの展開になったとしても、それを上回るカタストロフィーの激しさに圧倒される。 ただこの作品について言えば、話し手自身が当該の人間ではなく伝…

【−2】ネコのナキ声

タイトルから見ても、猫の鳴き声と赤ん坊の泣き声の類似性を利用して怪異を展開させようという書き手の意図は理解できるのだが、残念ながら、その発想そのものが陳腐なのである。 また怪異の肝と思われる“赤い目”の目撃の描写が舌足らずであり、文章全体の稚…

【+1】池

非常に臨場感のある展開であり、読み応えのある作品という印象を持った。 ただし怪談としては問題も幾分含んでいるという印象もあった。 まず“夢オチ”ネタであるという点は、やはり説得力の点でどうしても見劣りする。 最初に池に向かって無意識に入っていっ…

【−2】にゃあ

内容をかいつまんでしまえば、轢かれた猫の死骸のそばに猫の霊体を目撃したというだけのものである。 そのエピソードを軸に、猫の死体はなぜなかなか見当たらないのかなどの余談を付け加えたり、体験者の心情の細やかな変化を書き綴ったりしているのだが、如…

【0】一帖

凛とした文章で書かれており、あやかしの登場する場面の静謐さがよく出ているという印象である。 しかしながら、数多くの目撃があるにもかかわらず、坊さんの容姿についての情報はただ“でかい顔”だけであり、怪異の目撃談としては物足りなさを覚えるところで…

【+1】湿り気

冒頭で“サイパン”とくればほとんど最後の展開まで読めてしまうのだが、逆に定番であるために丁寧に状況を書くことで凡庸さを打ち消すことに成功していると思う。 評価できる点は、単なる気配や感触だけではなく、実際に日本兵の霊体を目撃していること、そし…

【+2】家具調テレビ

テレビと霊体は相性がよく、テレビを介して霊がコンタクトを取ったり、画面に霊体の顔が映る写真が撮れたりすることも結構ある。 だがこの作品のように、テレビに特定の霊体が憑依し、画面から飛び出して現れるというケースは非常に珍しい。 不思議で奇怪な…

【0】ギシギシ

目の前にあったものが突如として全く異なる外観を呈して体験者を唖然とさせるというパターンの怪異である。 このパターンの場合、一番の妙味は気付く前後の外観のギャップをいかに見せつけるかというところにある。 そしてその気付く瞬間の切り替えをどのよ…

【−5】あいつのラジオ

信憑性に多々問題がある作品である。 前日に事故死した友人と一緒に登山をしたという内容になるのだが、次の日に登山に行く予定があるのを家族が知っていながら電話一つよこさないという展開が非常に胡散臭い(“携帯もない時代”と断り書きがあるが、携帯がな…

【−1】クールドライブ

怪異の肝となる描写部分が非常に理解しづらいために、光景のイメージがほとんど出てこなかった。 殆どの講評で指摘されているように、運転手が両手であやかしの腕を掴んでいたら、誰がハンドルを持っているのかが全く説明できていないのが最大の難点。 あや…

【0】代車

轢き逃げされて死んだ警官が犯人探しのために夜な夜な一人検問しているという話は、かなり有名な都市伝説である。 季節外れの服装をしていて、不審に思った運転手が幽霊であると気付いて大騒ぎになるというオチであり、まさにこの作品の展開とほとんど同じと…

【−4】見る人、見ない人

怪談話に書き手や体験者の心霊観を挿入する、あるいはそれを主題として怪異を書くことは、あまり賛成ではないが、決して否定的ではない。 ただしそれを公開するためには、それだけ高いレベルの怪異を提示する必要があると思う。 要するに“あったること”だけ…

【0】宿る

シリーズの最終作となるだろう作品であることは理解するが、ルールに則って単独作ということで講評をおこなう。 怪異としては死者が現れるという単純なものであり、それを何のひねりもなくストレートに書いているだけの内容である。 それ故に評価としては、…

【+1】指先

同じことを繰り返しながら徐々に内容がエスカレートしていくパターンの作品である。 非常にテンポよく話が進んでおり、怪異としても希少と感じるところがあり、なかなか面白い内容であると思う。 勿論、指先に生えた毛であるから、体験者が痛みを感じるかな…

【−5】住活

とにかくダラダラとした会話調で冗長な展開をしており、ある意味読ませる文体であると思うが、内容が空疎であるため疲弊感を伴うレベルであった。 結局印象に残ったのは、不動産屋が見せる訳知りの対応の胡散臭さであり、魅入られたように嬉々として家に通う…